平成最後の教訓
平成最後の登山は、太郎平小屋を基地として、薬師岳、黒部五郎岳を登るルートだ。
連休初日の27日は高層天気図によれば冬型となり、風も15mを超える強い風が吹く予報が出ていた。
問題はその予報と現場での実際がリンクしていないことにある。かなり厳しい状況にあることは予測できるが、現場ではどの様な状況になるか、経験が不足している。
これは、現場を踏み、引き出しを増やすことしか予測の精度を上げる方法はない。
この時期は有峰林道は通行ができない為、折立の登山口からのアプローチはできない。飛越新道側から長い道のりを経て、北ノ俣岳経由で太郎平に至る。
下界では雨だった天候も登山口では雪に変わった。飛越トンネルからアプローチし高度を上げる。寺地からは風雪が強くなり、北ノ俣岳避難小屋から上は森林限界を越え遮るものは無くなり、さらに風雪が強くなる。
ハードシェルを着込み厳冬期装備に。。。避難小屋から上は20m近い風雪だ。新雪は20cm程か。所によっては膝上までのラッセルを強いられる。
悪天候に阻まれ時間がかかり過ぎている。同時刻、北ノ俣岳稜線では山岳遭難事故が発生していた。
行動は慎重に、判断は的確に、撤退は迅速に。。強風と強雪の中で体温が低下してくると正しい判断は難しくなる。
『登れた山より、登れなかった山に教訓がある』まさにその通りだと思う。平成最後の登山は大きな教訓を私たちに与えてくれたのである。