長野幸浩の日記『We Believe』

思いついたことを気楽に

劔沢小屋の主人


 劔沢小屋は、立山室堂から雷鳥沢を下降し、劔御前に向けて登り返し、さらに劔沢に向けて三十分ほど下ると赤い屋根が見えてくる。
 この時期は、本格的に小屋の営業はしていないが、春の劔岳登山の基地としてガイドや劔沢小屋の主人が認めた登山者だけに小屋を解放している。
 劔沢小屋の主人、佐伯新平氏芦峅寺立山案内人佐伯一族の一人であり、立山の歴史とは切っても切ることができない人物だ。彼の山に対する姿勢は非常に厳しい。
 彼がこの時期、誰にでも劔沢小屋を解放しないのは理由がある。劔岳は非常に厳しい山のひとつであり、劔岳に対する姿勢がないと思えば劔岳に登る事を厳しく戒める。
 彼は言う。『たまに長靴で劔岳にやってくる登山者もいる。それで登れない訳ではないが劔岳に対する姿勢に同感できない。劔岳に失礼だろう』と。
 彼は真摯に劔岳に向かい合い、多くの登山者の安全を願うからこそ厳しい言葉になるのだと思う。
 これから本格的に夏山のシーズンが始まる。今年も多くの登山者を劔岳と共に迎え入れてくれるだろう。
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