長野幸浩の日記『We Believe』

思いついたことを気楽に

ホンダでの想い出

 今から26年前の19歳の夏、私がまだ学生だった頃、一ヶ月間本田技研工業株式会社の鈴鹿製作所に夏休みの校外実習(今はインターンシップ制度と言う様だ。)に行った。
 親元を離れ一ヶ月と言う期間を寮に入って働くという経験は違う世界を体験し、実社会の厳しさを垣間見ることができる良い経験だった。
 私が配属されたのは、二輪車の組み立てラインだった。ひとつのラインに様々な種類の二輪車が流れてくる。流れてくる車種が変わるごとにジョブチェンジを行う。
 現場のベテランの作業員はジョブチェンジをする時にどんな部品を用意するか何をどう変えるかを全て記憶していた。
 そして、手際よくジョブチェンジをする。学生の私にはその手際の良さと正確さは驚きだった。
 私の配属された現場には木村さんという、現場の監督者(正式な役職は覚えていないが・・)がいらっしゃった。彼は本田技研の陸上部の監督でもあった。兄貴分肌でとても面倒見がよい方だった。
 私は毎日の作業を詳細に実習ノートにつけていた。ある時、作業が終わり、いつもの様に実習ノートをつけようと、ノートを開くと私が疑問に思ったことや質問事項を書き込んだ部分に、非常に丁寧にその疑問、質問について答えが書き込まれていた。
 それは木村さんが書いてくれたものだった。そこには、本田の社員でもない私を『育てる』という気持ちが伝わってきた。あの時の気持ちは今でも忘れられない。
 その日から私が書いた実習ノートには、木村さんのコメントが毎日書き込まれる様になった。その内容も現場でのフォローから、物事の考え方に至るまで様々だった。
 たまに、お昼もご馳走してくれたり、陸上の話をしてくれた。
 今から考えると、本当にすばらしい上司だったと思う。人間は人生の中でその人の人生に大きな影響を与えてくれる人と必ず出会う。
 幸いにも私はそんな人たちに恵まれたように思う。その中でも木村さんと過ごした時間はわずか一ヶ月だったが、それでは計れないものを頂いたような気がする。
 あれから26年が過ぎ去った。たぶん、今は現役を引退されていると思うが如何されているだろうか。
 もし、お元気ならば一度お会いできればと思う。
 私も木村さんのように人の心に何かを深く刻むことができる人間になりたいと思っている。
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