長野幸浩の日記『We Believe』

思いついたことを気楽に

手間と価値

 私の敬愛している経営者の一人にパタゴニア社のイヴォン・シュイナードがいる。彼はサーファーであり、クライマーであり、アングラーである。彼の経営哲学は私のバイブルである。
 彼の著書に『社員をサーフィンに行かせよう』がある。その中の一節に私たちが日頃大切にしている考え方を表した部分がある。
 >一人の顧客が、長年着用したかなり古いパンツを、修理できないかと送ってきた。修理可能な域をとうに超えていたため、私たちはそれを処分するという間違いを犯した。
 >顧客は感情を害し、どんな状態でもいいから、お気に入りのパンツを送り返してほしいと強く望んだ。私たちは代替品を無料で提供したが、顧客は自分が送ったものと同じ型、同じ色のパンツでないとだめだと言う。
 皆さんならどうするだろうか。頭を床にこすりつけて許しを請うだろうか。それともこれ以上できませんと開き直るだろうか。パタゴニアはその何れも選択しなかった。
 彼らは以下のようにしたのである。
 >私たちは書庫をかき回して当時の型紙を見つけ、その次にしかるべき色の、しかるべき布地を一反探し出した。ほどなく顧客は、古い型のパンツを、新品で取り戻したのだった。
 もちろん全ての顧客にこれほどの労力と費用を要しないが、こうした余分な手間に価値があることを彼らは知っている。
 私ならどうするだろうか。私たちの世界に、これほどのことは無いかもしれない。しかし、これに近いことが起きる可能性は十分にある。
 この部分をつまんで損得を計れば、採算が取れないことは明白である。しかし、この行為にはお客様を大切にし、お客様の信頼を勝ち取り、ブランドをお客様の心に刻むには十分すぎるものがある。
 私たちはつくる物は違うが、ものづくりをしている企業として、学ぶべきものがあると考えている。
 顧客満足度とは採算の中でのみ実現されるものではなく、ある時は不採算の中に大きく存在する場合があることを私たちは知らなくてはならない。
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