長野幸浩の日記『We Believe』

思いついたことを気楽に

逆転の発想

 私たち人間や動物は一個の受精卵が細胞分裂し、全ての細胞をつくり出している。受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、心臓をはじめとした内臓や、神経、筋肉、脳の細胞に変化する。これを『分化』というそうである。
 しかし、一度細胞分裂を行い変化した細胞は分化前の状態に戻ることが無いと考えられてきた。
 英ケンブリッジ大学ジョン・ガードン博士はアフリカツメガエルの卵から核を取り除き、オタマジャクシの体細胞の核を移植した。すると、この卵はもとのオタマジャクシと同じ遺伝情報を持つオタマジャクシに成長したのだ。これは一旦『分化』した細胞でも、卵の中に入れることで再びあらゆる細胞に『分化』できる『多能性』を持つように『初期化』ができることを発見したのである。
 それから40年、山中教授はES細胞(胚性幹細胞)や、受精させていない卵子の中で働く24種類の遺伝子を特定した。その中で多能性を呼び戻すのに必要な遺伝子を4種類に絞り込むのに突拍子もない発想でそれを実現させたのである。
 通常多能性を呼び戻す遺伝子を特定する為に一つひとつ、細胞の中に組み込むのだが、その作業は非常に困難を極める。山中教授は一度に24種類の遺伝子を細胞に組み込み、そこから一つひとつを取り除く事でその取り除いた細胞に多能性があるかを検証するという逆転の発想でそれを成し得たのである。
 これは特任助手の高橋氏が、一つひとつ試すのは時間がかかることから一度に24種類の遺伝子を組み込み取り除けばよいのではないかと考えたという。高橋氏は工学部卒であり生理学にはあまり明るくなかった事が功奏したとも言われている。
 既成概念が無かった事が今回の発見のスピードを上げたと言っても良いのだろう。エンジニアリングの世界でも問題にぶつかったら、反対側から見る事が大切だと教わった。逆転の発想が絡んだ難問を解き明かすカギになることはこれまでの歴史が証明しているのである。
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