山の霊異記
- 作者: 安曇潤平
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2016/07/02
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
あまり、この様なことを書くと、おかしいのではないかと思われかねないので、これまでブログには書かなかった。
最近、山の霊異記という小説を見て、事実かどうかわからないが、こんなことはあるよな、と妙に納得してしまったのである。
昨年、槍平から槍ヶ岳へ登った時のことである。もうすでに季節は初冬で、槍ヶ岳山頂は、0度を下回り、10m以上の風が吹いていた。体感温度はマイナスだ。
山頂での眺望の写真をカメラに納めようと少々長居をしてしまった。下山が2時半を過ぎてしまったのだ。この季節の山の日暮れは早い。
途中、ヘッドランプをつけて歩くことを覚悟しながら槍平を下った。案の定、槍平小屋を過ぎたあたりから、暗くなり始め、あっという間に真っ暗に。
ヘッドランプを頼りに登山道を急ぐと、後ろに人の気配がする。振り返っても誰もいないのだ。そして、ついには『キー・キー』とカラビナが擦れる音が私たちについてくるのだ。背筋に寒いものを感じ、もう後ろを振り返ることができない。
走る様に下るが、音はずっと同じ距離を保ちながらついてくる。ふと前を見ると滝谷の避難小屋が見えた。ここは、遭難者の遺体を収容する小屋として有名だ。身の毛がよだつ感覚を覚え逃げる様に小屋を通過した。
小屋を通過した途端、音は止み嫌な雰囲気がなくなった。しかし、街灯もない真っ暗な登山道は不気味だ。わずか一時間の距離が数倍に感じた。
新穂高の駐車場に着いた時はもう8時に近かった。ほっとしたと同時に、もう二度とヘッドランプをつけて夜の登山道を歩きたくはないと思ったのである。
世の中には不思議なことがあるものである。