江戸しぐさ
『江戸しぐさ』は江戸商人の心構えである。良き商人として如何に生きるべきか、また共倒れしないために、如何にして円滑な人間関係を築くか。
すなわち江戸商人の考え方、生き方、口の利き方、身のこなし方等、江戸商人の円滑な人間関係を築く知恵、共生のための生活哲学である。
そして『江戸しぐさ』は江戸商人のリーダーから口伝えで継承されてきたもので、文章にも残されておらず門外不出とされてきた。
この『江戸しぐさ』の代表的な動作として、『肩引き』『傘かしげ』『こぶし腰浮かせ』がある。
『肩引き』とは、混みあう道路で行きかう人と肩がぶつからないように右腕を後ろにひき、胸と胸を向かい合わせる形で通り過ぎる動作のことを言う。
『傘かしげ』は雨の日に人と人とがすれ違う際、雨のしずくで濡れないように相手と反対の方へ傘を少し傾ける動作を言う。
また『こぶし腰浮かせ』とは、バスや電車であとから乗ってくる人のために、こぶしひとつ分、腰を浮かせてすこしずつ幅を詰めながら一人分の席をつくることである。
この様に江戸しぐさは下町の人口密度が非常に高かった江戸の町で、人と人がどうしたら、お互いを思いやり、気持ちよく生活できるかを考えて作り上げられたものである。
- 作者: 越川禮子
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この様な情報が入ると人間はその『人』そのものを見て物事を判断しなくなってしまう。
現代でも一流企業の社員であるとか、政治家であるとか、弁護士であるとか、その『人』そのものの本質を見ずに、肩書きでその『人』のイメージを勝手につくり上げてしまうことが多いのではないだろうか。
今の世の中で『自由』と『利己主義』を勘違いしている人たちが多い中、私たちは今一度『江戸しぐさ』を学び、人としての基本に気づく必要があるのではないかと感じる一冊であった。
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