社会的利益

　私たちが30年ほど前に開発した、真空ポンプ駆動技術、すなわち『電磁クラッチ式自動揚水装置』は現在全ての国内のメーカーの消防車に搭載されている。
　当時、消防車の現場でのトラブルの殆どが、放水不能に陥ることであった。
　その原因は真空ポンプにエンジンの動力を伝達する『コーンクラッチ』の不良によるものであった。
　私たちは『コーンクラッチ』に変わる、新たな技術を模索し、当時まだ珍しかった、カークーラーのコンプレッサーに動力を伝達する際に使用されていた電磁クラッチに着目、約１年の歳月を経て『電磁クラッチ式自動揚水装置』を開発した。
　この技術は、特許をとることなく、公開され現在では全ての消防車に搭載され、業界のスタンダードとなった。
　この技術のお陰で、間接的に多くの人命が救われたと私たちは信じている。
　世の中で優れた技術は特許に守られ、『企業利益』に貢献する。
　それも、企業活動の上では正しい。しかし、人命に深く関わる技術は特許をとることなく、幅広く社会に公開する、これが私たちの思想であり、『社会的利益』である。
　この判断はとても難しい。私たちも、これまで全ての技術を公開してきた訳ではない。これからもきっと迷い、悩みながら進んでいかなくてはならないだろう。
　最後に価値判断に迷った時は『企業理念』がそれを示してくれるものと信じている。
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