神業
車両事業部(消防車の製造部門)ではこの時期は消防車の部品づくりを主として行なっている。
私たちは以前から継承すべき技術として、標準的な消防車のリヤフェンダーの製造をハンドメイドで行なっている。
殆どの消防車メーカーではヘラ絞りやプレスの技術で機械加工している事は理解している。まさにその方が均質性が高く、ローコストで出来ることは間違いない。
しかし、私たちはこの技術を継承すべき技術として認定し、未来へ残していく決意だ。何故ならばリヤフェンダーをつくるという技術の中にはとても多くの『わざ』が含まれているからである。
今年に入ってこの作業をする社員が代わり、フェンダーをつくり始めたのだが何故かひずみが発生し均質にならない。
どこに問題があるのか、様々なトライをしたが良く分からなくなってしまった。
そこで、以前私たちの企業に勤めておられ、この作業をされていた元社員の佐々木さんにお電話を申し上げ、何が悪いのか指導を仰ぐことにした。
佐々木さんは今年で78歳であるが本当にお元気だ。今日は午前中から弊社の高柳工場へお越しになられ、現在行なっているフェンダーづくりの作業をご覧になられたところ、何がおかしいのか一瞬で見抜かれた。
そして、作業員にいくつかのポイントを指示し、その通りに行なうと、これまで取れなかった歪が無くなり、無理やり造形していた部分が測ったように『ピタリ』と合ってしまった。
もう驚きを通り越えて感動してしまった。神業である。
佐々木さんも『ご縁ですね。長野ポンプとの糸が切れていなくて良かった。』と本当にうれしそうに仰られた。
日本人は手先の器用さから、様々な手仕事の技術を持っていた。これが量産化という大きなトレンドに飲み込まれ多くが廃れていってしまった。
無くしたものを取り戻すことは難しい。私たちは非効率であろうと、この技術を私たちの誇りの一部として後世に伝えてゆきたい。
佐々木さんには心から感謝を申し上げたい。
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