長野幸浩の日記『We Believe』

思いついたことを気楽に

古い旋盤と職人の技


 その腕から生み出される技は人の領域を超えているかも知れない。今日ではNC旋盤やマシニングセンターなどコンピューターで制御されている工作機械が少なくない。それは自らの技術で工作機械を操るというよりはプログラマーやオペレーターといった方が正しいのかも知れない。
 しかし、彼は違う。弊社にある私の年齢よりも古いと思われる旋盤を操り1〜10ミクロンの加工精度を実現してしまう。その基本に忠実な作業には全く無駄がない。旋盤の前に立つ彼の立ち姿は安定していてとても美しいのである。
 そんな、彼は今年で72歳を迎え引退の意向を伝えてきた。もう彼のような技能者は出て来ないだろう。いや、私たちに失敗があったとすれば、彼に続く人材を育てる事が出来なかった事だ。
 手の技は一度失えば二度と戻ってこない。その技は長い時間を懸けて積み重ねられたものだ。
 彼の引退と共に私の年齢よりも古い旋盤も引退する事になるだろう。なぜならその旋盤の精度は工作機械の癖を知りつくした彼と一体で初めて機能するからである。
 日本のものづくりの技術はこの様な人たちに支えられていた事は間違いのない事実なのである。
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