トヨタは何が優れているのか
トヨタといえばものづくりに携わっている私たちが真っ先に頭に浮かぶのはトヨタ生産方式についてである。それについての様々な書物が発刊されており、私も何冊も読ませて頂いた。
車づくりは数えきれないほどの分野で様々な角度から検討が加えられ、車という製品がつくり上げられる。それは一言で表すには余りにも膨大なプロセスであることは承知しているつもりだ。
車づくりも私たちの様な消防車づくりも数値や仕組みの中で完成されるものと、数値での表現が難しい感性の領域で成熟させるものがある。
欧州車(メルセデスやBMW等)はこの感性の領域を作りこむことが出来る優れたテストドライバーがいると聞く。
車は単純に優れた要素を組み合わせても良い車にはならないと聞いたことがある。良い車を完成させるためには優れた人間の感性とそれを実現させる為には何をどうすれば良いのかを判断できる経験が必要なのだ。
トヨタの何が優れているのかといえば前述した生産システムを始めとした様々な仕組みが上げられるが、車づくりに必要な感性領域を担当する優れたテストドライバーの事を忘れてはならないと思う。
2010年6月にトヨタのチーフテストドライバー、成瀬弘氏がドイツニュルブリックリンクの郊外で自動車事故を起こし帰らぬ人となったことは記憶に新しい。彼は豊田章男社長に車づくりの過程の中で感性の領域の大切さを伝えたと聞く。
ニュルブリックリンクでの24時間耐久レースはドイツを始めとしたヨーロッパの文化であり、その中で育まれるユーロカーが何故優れているのかはそこを尋ねれば理解できると言う。成瀬弘氏はその事実がこれからの日本の車づくりに大切な事だという事を伝えたかったのだろう。
定性的な部分を大切にするものづくり企業は日本には多いはずだ。私たちは消防車メーカーとして定量的な仕組みと定性的な感性を大切にし、ひいては消防職員、分団員の皆さんの活動を支える事ができる消防車をつく続けたいと思うのである。