昭和の叙情歌

　私たちが子どもの頃、当時聴いていた歌謡曲を周りの大人は何を歌っているのか良く分からないと言っていた。また、沢山の新人歌手がデビューした時代でもあったので、歌手の名前も覚え切れなかったのだろう。
　今、私はそんな時代を迎えているのかもしれない。あまりにも早いメロディー調や、横文字が混じった曲も歌詞の内容が意味不明だ。
　子ども達はあっという間に歌詞を覚えてしまい、メロディーを口ずさんでいるが、聴いていても雑音にしか聞こえない。歳を取ったのかも知れない。
　最近は、昭和の叙情歌や童謡を聴いていると、とても心が落ち着く。小学校の頃、学校の音楽の教科書に載っていた叙情歌は、当時聴いていても何も思わなかったが、今になって聴くと、当時の学校の様子や通学途中の景色が心に浮かんでくる。
　その中でも滝廉太郎の荒城の月は明治に作曲されたものだが、とても綺麗な日本語と日本の曲調は何ともいえない情緒がある。
　皆さんは、四季を音楽や匂いで覚えていないだろうか。
　春には春のメロディーや匂いがあった。夏は、我は海の子のメロディーや青臭い緑と土の匂い、秋は虫の声のメロディーや稲を刈ったときのわらの匂い、そして冬は学校の石炭ストーブの匂いだ。
　最近は音楽の教科書から昭和のメロディーが消えつつあると聞くが、日本の文化として子ども達に伝えて欲しいものだ。大人になった時、きっとそれは心の中に残り、子ども達の心を豊かにしてくれるに違いない。

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