長野幸浩の日記『We Believe』

思いついたことを気楽に

息が凍って窒息する


 朝目覚めると抜けるような青空の中に真っ白な木曽駒ヶ岳が浮かんで見えた。窓から見える富士山の山頂付近から太陽が顔を覗かせた。
 毎年、ダイヤモンド富士を見に多くの人たちが千畳敷にやってくるそうだ。元旦の天候はあまり良くないようだ。一足先にダイヤモンド富士を見ることができたのは幸運かもしれない。
 さて、朝食を取り、木曽駒ヶ岳の山頂を目指す準備をする。千畳敷の標高は2612mなので一気に森林限界を超えた厳冬期の山がそこにある。
 天候は良いが乗越浄土まで登れば吹き飛ばされそうな風が吹いているはずだ。厳冬期装備を整え、千畳敷を登るが、昨晩からの降雪で膝上のラッセルとなる。フカフカの雪は、体力と時間を消耗するのに十分な量だった。
 おっとせい岩を過ぎると一気に斜度が増して、雪面も固くなる。乗越浄土まで一気に登りきる。稜線は恐ろしい風が吹いている。風速は20mを優に超えているだろう。
 バラクラバについた息の水蒸気が凍結し、空気を吸うことができない。
 しかし、中岳を経由し木曽駒山頂に立った時は、遥か彼方に冠雪した富士山や南アルプスの名峰が見せてくれる景色は筆舌に尽くし難い。
 木曽駒ヶ岳から宝剣岳に歩を進めるが、厳冬期の宝剣岳は非常に危険だ。今回はコンデションが良かったため、難なく山頂を踏むことができたが、宝剣岳の取り付き付近は特に危険であり、後に教えを請うている山岳ガイドから、知っていたら行かせなかったと言われた。
 危険を危険と認識できないことが最も危険であり、こんな所で、という場所で事故は起こっている。『慎重でなかった仲間はもうこの世にはいない』という言葉が脳裡に過ぎったのである。
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