長野幸浩の日記『We Believe』

思いついたことを気楽に

創業者の法要


 私たちの企業の創業者は私の祖父である。名前は長野三郎といい長野ポンプの基盤をつくった。祖父は私が生まれた昭和37年に他界したので今年が50回忌の法要である。
 法要の際にお経をあげてくださったお坊様が祖父の逸話を話してくださった。
 丁度、私が生まれた年、金沢の東別院が火災で焼失した。入院していた病院の窓から立ち上がる真っ黒な煙を見た祖父は私の父に『東別院の火事の見えるところまで連れて行って欲しい』と頼んだそうだ。そして、自宅の隣の石野テントさんの蔵の屋根に登りじっと火災を見ていたという。
 消火活動に当たる消防職員の身を案じていたのだろうか、または消防自動車を製造している者としての使命を感じていたのだろうか。祖父が何を思っていたのかは今は知る由もないが、ただ祖父の大切にしてきたものづくりの哲学は連綿と私たちの企業に継承されている。
 祖父は『決して出来ないと言うな、世の中で難しい事はあるかも知れないが出来ない事など無い、お客様の望まれる通りに消防車をつくりなさい』と言っていたそうだ。企業が成長する際に、大切なのは創業の理念を常に成長の中心に据える事だ。
 往々にして、企業は成長する際に近視眼的に成りやすいものだ。私たちは何故存在し、これからどの方向へ進むのか、その道は理念が示している。私たちの企業が77年の歴史を刻む事が出来たのも、理念にしたがって行動してきたからに他ならない。
 50回忌の法要のご縁に出会う事ができるのは本当に僅かな機会だ。それも祖父が60歳の若さで他界したことで今日のご縁を結んだ。当時若くして亡くなった事を惜しまれたそうだが、その事にもこのご縁を結ぶという理由があった様に思えてならない。
 今年は親鸞聖人の750回大遠忌法要の年だそうだ。それもご縁、そして私がかぞえ歳で50歳なのも何か深い因縁を感じるのである。
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